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簡単な地図の読み方
2012.4.14
山口県山岳連盟 坂口仁治
1.なぜ地図が必要なの?
 ガイドブックを参考に山に登ることはあっても、地図とコンパスを持って山に登ったことがある人は少ないのではないでしょうか?
 思い込みや方向音痴で道に迷ってしまったときに、地図とコンパスがあれば間違いを修正することができます。登山をする上で、行動を的確に判断するために、地図の活用は不可欠とも言えます。
 
 地図は約束事を元に作られていますので、その約束事を理解していれば、知らない山でも迷うことなく歩けるようになります。
 また、頂上からの素晴らしい眺望を楽しみながら、視界に入る場所がどこかを知ることもできます。
 そのためにも、地図の読み方を勉強してみましょう。
陶ヶ岳山頂での地図の読み方勉強会
2.山にどんな地図を持っていったらいいの?
■登山地図・ガイドブック  
  一般ルートを歩くだけならこれで十分です。
 コースタイムが記入してあるものは、その山がどれだけの時間で登れるかを知ることができます。行程を考えるのには、とても便利な道具です。
 しかし、記載してあるコースタイムは、作成者の意図によってかなり違ってきますので、過信は禁物です。また、縮尺が小さいので、小さな地形の変化が読み取れないのが難点です。
■地形図
 より深い本格的な山や地形が複雑な沢登りなどへ出かけるには必需品です。
 複雑な地形の凹凸を等高線で図上に表現した地図で、一般的には国土地理院発行の1/25000地形図が使われています。
 約束事が理解できればとても便利な道具になります。
 *両方あるのが、bestです。
3.地図の読み方ポイント
■まず地図上で自分の位置を確認すること
 地図読みの第一歩は、自分の現在地とこれから登る山の確認です。
 今回は、聾学校、消防学校、山口県セミナーパークとこれから登ろうとする陶ヶ岳や火ノ山の位置を地形図で確認します。
■ 歩き始めたら、自分のいる位置を時々地図上で確認しながら歩くこと
 目安となる場所や休憩地点へ着いたら、現在地を地図上で確認してください。
 最初は鉛筆でコースを記入しながら歩くと良いでしょう。途中で現在地を確認しないまま登って行くと、現在地が分からなくなります。
 [目安となる場所]
  ・民家や植生界、交差点や曲がり角など
 
  ・ ピークを見つける⇒ピークから続く尾根を確認する⇒谷、沢筋を確認する
■ ポイント間の予測を立てよう
 一般の人が山で歩くペースは次のような目安を知っておくと便利です
 
  ・標高差100メートルはだいたい15〜20分程度
 
  ・距離が長い場合や急坂を除き、斜度に関係なく、登りは高度差300〜400メートルは1時間。下りはその3/4と考え、高度差300〜400メートルで45分程度
 
  ・平地の通常の歩行距離は1キロが約15分位(時速4キロで計算)です
■地図の約束事を知ろう/地図は進行方向に向けて見よう
 通常の地図は、北(真北)が上で作られています。進行方向と方角をもとに自分の位置を確認します。
 
 【参考までに】
 ・ 厳密に言うと、コンパスの指す北は若干西側に傾いています。これを磁北と言います。その理由は、地球の磁北の極と北極点が一致しないからです。地球の磁北の極はグリーンランドの北のスミス海峡付近で、長い時間かけて少しずつ移動しています。その差を偏角といい、時間と場所によって異なります。沖縄で5°〜北海道で10°位となっています。今回の1/25000地形図「台道」は「磁針方位は西偏6°40′」と記されています。
 
 ・ 1/25000地形図の縮尺は、その倍率通りに1ミリが25000ミリ(25メートル)、同様に1センチ → 250メートル、4センチ→1キロ です。
 自分の指先でメジャーを⇒人差し指と中指を軽く広げると約8cmになります。これが1/25000地形図の縮尺では2kmですから、これを目標物間に当てた回数で大凡の距離を知ることが出来ます。自分の8cmの指間隔を知っておくと便利です。
 
 ・ 等高線は高度10m毎に引かれ、これを主曲線と呼びます。標高を読みとりやすいように、50mごと、太い線が引かれています。これを計曲線と呼びます。
 
 ・ 等高線の間隔が狭いと急な斜面、間隔が広いとなだらかということになります。
 
 ・ 緩傾斜地では主曲線間がひらくので、その間の5mを長破線で入れます。これは間曲線と呼びます。
 
 ・ 地形図は登山用の地図ではないので、図上に登山道としての道の記入はありません。図上の破線をすべて登山道だと思っている人がいますが、あくまでも幅員1.5m以下の道だと理解してください。この破線が登山道の場合もあれば、そうでないこともあり、実際には登山道があるのに破線で記入されていないこともよくあります。
 
 ・ ジグザグの振り幅が25mであれば、図上では1mmになります。幅員1.5m以下を示す破線を1mmの幅でジグザグには表現できないので、登山道は直線で表わされてしまいますので、地形図上からは直登だと読みとれても、実際にはジグザグに登っている可能性もあります。
 
 ・ 記号の説明は地形図の右の枠外にあります。ちなみに実線1本は幅員1.5から3mの道になります。
■ 道に迷ったら
 気がついた時点で現在地が確認できるところまで戻りましょう。急がば回れ、私の経験からも、元に戻った方が賢明です。
■ 地図にメモを
 気づいたこと(ポイントごとの通過時間・ビューポイント・花や動物に出会った場所等)を地図に書き込むと貴重な想い出になり、登山仲間にも紹介できます。
4.読み方の例
尾根と谷
 丸く円(楕円だったりもする)を描いているところは、頂上もしくは凸部です。そこから外側へ張り出していくように描かれる等高線は、尾根を表現しています。
 反対に、凸部に向かって食い込むように描かれる等高線は、谷を表現しています。こちらは、尾根を表現する等高線のカーブより鋭角的なことが多くなります。
 凸部と凸部の間、尾根を表現する等高線の向きが反対方向になるところが鞍部(コルとも言われる)になります。なお、丸く円が描かれていても、そのなかに矢印が示されているところは凸部ではなく、凹地であることも知っておいてください。
尾根に乗る
 右の地図においては、左の標高が高く描かれています。
 尾根は等高線の一番出っ張った部分を繋いでいったものになります。
 図では真ん中の太い線が尾根になります。
 ●「尾根に乗る」というのは、この尾根の真上を歩いている状態です。
 周りの特徴を見て、自分が尾根に乗っているということがわかれば、少なくとも地図上に書かれている尾根のどこかにいるわけです。
 尾根筋についているルートなら、尾根に乗って、これを忠実にたどれば迷うことはありません。
 
 ●尾根に乗っている状態とは、右にも左にも自分より高い場所がないということです。
 自分の左右を見て、あらゆる地形が下に向かっている。これが、尾根に乗った状態です。
 
 ● 例えば右側が自分より高くなっていれば、尾根の左側にいることになります。
 左の方が自分よりも高ければ、尾根の右側にいます。左右が同じ高さであれば、斜面にいることになります。
■登山道の確認(図中の赤太線の登山道がついていたとします)
  (※25000分の1地形図と仮定)
@等高線の間隔は10メートルなので、登山口から1の地点まで、標高差はだいたい50メートル登ります。この間は左右が登山道とほぼ同じ高さなので、しばらく斜面と考えられます。
 
A斜面を登って行き尾根に出ると、左右が自分よりも低くなりますから、1の地点に着いたことが分かります。(本図の場合、尾根を見なくても左に道が折れますから、それでわかります)
 
B1から2の間は、尾根(稜線)歩きです。
 
C2からは等高線に沿って歩くトラバース(横切ること)ですから高さは変わりません。左側が少し高くなっていますので、尾根は左側にあります。3で再び斜面を登り、尾根に向かいます。
5.山座同定「あの山は地図上のどれかな?」
■地図上の既知の点から未知の点を同定するには?
 この方法を覚えれば、登頂後の山頂から「あの山が大海山だね!」とか「遠くに見える山は東鳳翩山だね」と山の名前を特定する「山座同定」を楽しむことが出来ます。
1) 目の前にある山(対象物)の名前を知るには

 まずコンパスを胸の高さに持ち脇を締めて調べたい山頂の方に向けます。
@ 次にコンパス本体矢印を調べたい山に向けたままリングを回して針の赤とリングの「N」を合わせます。
A コンパスの針は真北を指していませんので、その修正が必要です。
 コンパスのリングに刻まれた目盛りは一般的なコンパスの場合、1目盛が2度なので目盛を3〜4個分時計回りにずらしてください。
 *地図の使用する領域に西編(例えば6°50′)の線をあらかじめ何本か入れておけば、上記の補正をすることなくその線を磁北線として使用することもできます)

B 次に地図の上にコンパスを置き、リング中の細い線と地図上に引かれている南北の線〔今回は地図の端の線〕を合わせます。

C 最後に南北が合ったらそのままコンパスを平行移動させ地図上の現在地に長辺を合わせます。
 するとそのコンパスの長辺のラインか、その延長線上に知りたかった山の名前があります。
(2)自分の今いる場所を知るには
現在地が不明だが、周囲にある二つの山頂名が地形図上で分かっておれば、上記と同じような操作を行い、この2点から手前に方向線を引くと交わったところが現在地になります。

@ 目標物(例えば山:何山かわかっていることが前提)にコンパスの向きを合わせ、次にリングの矢印と磁北を合わせます。

A 地図上で目標物にコンパスの端を合わせて、それを支点に矢印が磁北線に平行になるようにコンパスを回して、合ったら長辺に沿って線を引きます。

B 目標物を変えて、@Aを行い、線が交差したところが現在位置です。
(3)あらかじめ決めた方向に進みたい場合
@ リングを設定する
 例えば40°の方位にベースの矢印を向けたいとします。
 リングを回して、度数目盛の40°を度数線に持って来て下さい。
 
Aリングの矢印を磁北に合せる
 リングとベースの位置関係は動かさずに、ベースごと回します。
そしてリングの矢印 を磁北に合せます。この時、ベースの矢印が40°の方位です。
 これは例えば40°の方位に進み続けたい時等に有効です。
 一回設定すればコンパスをポケットにしまってもリングがずれる事はめったにありません。しばらく歩いた後、ポケットからコンパスを取り出してリングの矢印を磁北に合せればすぐに40°の方位が分かります。
(4)コンパスで時間がわかる?
 太陽の方向に0 度(▼印)を合わせます。
 0 度から北を指す針の角度を15 で割った数字が、現在のおおよその時間になります。
図の場合は北を指す方角が60 の目盛りを指しています。
これは▼印からの角度が60度であることを示しています。
ということは、60÷15=4 で、現在の時刻は大体4 時ということになります。
(5)まとめ
 まずは目の前に見えている山の名前を地図とコンパスで調べてみましょう。
 いきなり知らない山を調べるより、自分が知っている山からチャレンジすれば、すぐに答え合わせが出来るので、上達も早いと思います。
 あとはマメに地図を見て、図上で現在地を確認していくこと。これをクセにできれば地図はあなたの手の内に入ってきます。
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