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山口県岳連29年度事業「読図およびGPS講習会」報告
 開催概要

 H28年度、日本の山岳遭難で最も多い事故形態は「道迷い」で、総事故数の約 42%を占めているのが警察庁統計で示されている。
 近年、IT技術は日進月歩で進み現在地確認の手段に電子機器のハードやソフトウエアーが駆使されるようになった。しかし、これらの操作には電源が必要であり、その容量は有限である。このことから、紙地図も必須であり、その読解力が求められる。これらの技術力向上として、地図とコンパス或いはGPSを利用したナビゲーション技術を学習し、「道迷い」低減の活動とする。ここで学習した技術により、正しい地図の取り扱いを取得し、目的登山地の地図を、手軽に入手する手段を学習する。「楽しい登山」と「安全な登山」の一助となれば幸いである。
 本講習は最近の「山岳遭難事故の統計」から道迷いあるいはそれに関連する事故が飛び抜けて多いことに鑑み、岳連会員の「読図」に関する技術の向上を企画した。また登山行動時にはいつでも地形図携行できる環境を作るため、国土地理院HPから地形図ダウンロード方法の学習を行い、「地形図と磁気コンパス」あるいは「地形図とハンディーGPS」を使用したナビゲーションと地形図に対する知識の取得を行った。
1.主 催: 山口県山岳・スポーツクライミング連盟
2.日 時: 平成29年12月3日(日) 9:00~16:00
3.場 所: 山口県セミナーパーク215号研修室
4.参加費用: ¥500
配布資料:地形図、DVDディスク(国土地理院電子地図の印刷方法、コンパスの使い方、GPSの使い方など)、GPS定規(緯度経度情報から地図上の場所特定の補助具)
5.使用した用具: ①ベースプレートコンパス(シルバーコンパス) ②筆記具 ③定規(30cm 以上)
④A3版陶ヶ岳周辺1/2.5万地形図
6.講習内容: (1)座学Ⅰ(9:00~10:00)
 地形図から登山に必要な情報を読み取る方法を解説する。GPS定規を用いて、目的地或いは特定場所の緯度経度の読み取り、或いは与えられた緯度経度情報から地形図上の場所を特定する方法を学習した。

(2)屋外実技Ⅰ (10:00~12:00)
 A3版陶ヶ岳周辺1/2.5万地形図とコンパスによる屋外実習。セミナーパークから県道194号線を北に進み,陶ヶ岳登山口-陶ヶ岳山頂に至るコースを設定し、陶ヶ岳山頂へ至るナビゲーションを行った。本設定コースの場合、途中で左に90°に陶ヶ岳を最終目的地として、直接コンパスに方位を設定した後、ナビゲーションを行うと途中大きく左折する位置から、方位ナビが大きく変化するため、この地点でコンパス方位の再設定が必要であることが判った。
講習後に判った事であるが、目的地へのコンパスナビを行う場合、コース上の大きな屈曲点毎にコンパス方位を設定することで、ナビゲーションの精度が向上する。目的地へは第一目的地、第二目的地・・・・最終目的地と屈曲点毎にコンパス方位の再設定を行うことが必要である。

(2)座学Ⅱ(13:00~14:00)
 ①地形図の基本的な読み方 ②地形図の利用、加工方法
 ③国土地理院地図(電子地図版)の印刷方法 ④カシミール3Dによる印刷方法
 ⑤新旧地形図(紙地図)の違い

(3)座学Ⅲ(14:00~15:30)
 ①ナビゲーション用地図の作成方法
 ②GPS軌跡ログの読み込みと加工方法
7. 講師:
  参加者:
細川 功(山岳・スポーツクライミング連盟遭難対策委員)
山口山岳会;8名、周南山岳会;1名、ハイキングクラブ山歩;1名、
宇部山岳会;2名、山口県山岳・SC連盟;2名、計14名(含む講師)
8.研修内容 (1) 登山に必要な地図について。登山には国土地理院・1/2.5万地形図が基本でこれは登山活動には必須で、同時に磁気コンパス必須の用具である。その入手方法は種々あるが、一つは国土地理院発行の1/2.5万紙地図、その他として同縮尺の個人的に作成した印刷地図、登山専用に発行された市販地図などがある。ここでは国土地理院発行の1/2.5万-紙地図を中心に利用・加工方法を学習した。緯線経線、緯度経度、磁北線を記入した地形図への印刷方法。
(2) 地形図の構成および読み方
地形図の構成とその読み方、特に登山活動で主に使われる記号や地形図に書かれた三次元情報の読み取り方を学習した。
(3) 磁気コンパスおよびハンディーGPSコンパスモードの使い方
地形図と合わせてコンパス(磁気、GPS)を使う場合のセッティングについて解説した。
(4) 地形図とコンパスを使ったナビゲーションを山口付近用のGPS定規を配布し、これの使い方を学ぶ。GPS緯度経度情報から地図上の位置の特定方法、またその逆の地図から緯度経度情報を読み取る方法の実習。1/2.5万地形図から特定の位置の緯度経度を読み取る、あるいは緯度経度から地形図上の位置を同定する方法。
(5) 登山用地形図の印刷方法、カシミール3Dの応用方法
9.まとめ (1) 近年、登山に於ける「道迷い」に起因する事故が多く発生、本講習がこれらの事故を抑制し、安全登山の一助になれば幸いである。
(2) 読図は登山活動の基本で有り、これらの技術はベテランでなくても容易に学べることであり、日頃の登山では常に読図を心がけて活動して欲しいものである。
(3) 登山活動には地図が必携であり、同時にコンパスをセットで携行してほしい。インターネットの普及により、国土地理院のホームページから容易にダウンロードし、地形図の作成が可能な環境である。これらを使って、登山にはいつでも地図を携行する習慣を付けて欲しいと希望する。必要に応じて目的登山に最適な地形図の出力ができる力をつけると良い。目的地範囲地図が用紙の中央に配置されるように印刷する。
10.配布資料: 以下に配布資料の明細を示す。
① 陶ヶ岳周辺地形図 ② GPS定規 ③磁北線記入演習および複数地図接続用地図 ④緯度経度、地形図作成、コンパス利用のための資料(DVD)
山口県岳連29年度事業「読図およびGPS講習会」報告 ←PDFで見る
報告  山口県山岳・スポーツクライミング連盟 遭難対策委員 細川 功 )
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