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山口県岳連28年度事業「読図およびGPS講習会」報告
報告者:細川 功
 開催概要
 警察庁の山岳事故統計では、昨年度の最も多い事故形態は「道迷い」と報告されている。
 昨年の道迷いによる事故発生件数は39.5%で、「転落・墜落・滑落」の事故には間接的に道迷いで危険域に入り事故につながることを考慮すると、更に高い比率となると考えられる。
 これらの道迷いによる遭難防止の一助として本講習会を開催したのでここに報告する。

 「山岳遭難事故」は日本アルプス等のメジャーな山岳地帯が突出ししている。しかし、長野県などメジャーな山岳では遭難の態様は少し異なり、「道迷い」による遭難は少なく「転滑落・転倒」などの事故が多い。「道迷い」が少ないのは登山道の整備やルート標識が整っている事による。 
 一方、地方では里山登山が多く、登山道やルートの整備が整っていない事に起因する「道迷い」が突出している。また、山の規模が小さいことで、安全に対する準備が疎かになっている実態がある。
 本講習は最近の「山岳遭難事故の統計」から道迷いあるいはそれに関連する事故が飛び抜けて多いことに鑑み、岳連会員の「読図」に関する技術の向上を企画した。
 また登山行動時にはいつでも地形図携行できる環境を作るため、国土地理院HPから地形図ダウンロード方法の学習を行い、「地形図と磁気コンパス」あるいは「地形図とハンディーGPS」を使用したナビゲーションと地形図に対する知識の取得を行った。
1.主 催  山口県山岳連盟
2.日 時  平成28年12月4日(日) 9:00~16:00
3.場 所  山口県セミナーパーク220号研修室
4.参加費用  ¥500
 配布資料:地形図、DVDディスク(国土地理院電子地図の印刷方法、コンパスの使い方、GPSの使い方など)、GPS定規(緯度経度情報から地図上の場所特定の補助具)
5.使用した
  用 具
 ①ベースプレートコンパス(シルバーコンパス) ②筆記具 ③定規(30cm 以上)
 ④A4版程度のハードボード(クリップボード)
6.研修
スケジュール
 (1)座学Ⅰ(9:00~12:00)
①地形図の基本的な読み方 ②地形図の利用、加工方法
③国土地理院地図(電子地図版)の印刷方法 ④カシミール3Dによる印刷方法
⑤新旧地形図(紙地図)の違い
 (2)座学Ⅱ(13:00~14:00)
当日、雨天となり屋外での実技は中止して座学とした。
①地形図とコンパスによるナビゲーション、コンパスによる目的地方向の設定、現在地確認、山岳同定方法。
②地形図とGPSによるナビゲーション当日セミナーパーク周辺1/25,000 地形図を配布、地形図の整地方法。
 (3)座学Ⅲ(14:00~15:30)
①ナビゲーション用地図の作成方法
②GPS軌跡ログの読み込みと加工方法
7. 講 師  細川 功(山岳連盟遭難対策委員)
 参加者:周南AC;4名、山口AC;4名、宇部AC;2名、
      山口県山岳連盟;1名、一般16名、計26名(含む講師)
8.研修内容  (1) 登山に必要な地図について。
 登山には国土地理院・1/2.5万地形図が基本でこれは登山活動には必須で、同時に磁気コンパス必須の用具である。その入手方法は種々あるが、一つは国土地理院発行の1/2.5万紙地図、その他として同縮尺の個人的に作成した印刷地図、登山専用に発行された市販地図などがある。ここでは国土地理院発行の1/2.5万-紙地図を中心に利用・加工方法を学習した。緯線経線、緯度経度、磁北線を記入した地形図への印刷方法。
 (2) 地形図の構成および読み方
 地形図の構成とその読み方、特に登山活動で主に使われる記号や地形図に書かれた三次元情報の読み取り方を学習した。
 (3) 磁気コンパスおよびハンディーGPSコンパスモードの使い方
 地形図と合わせてコンパス(磁気、GPS)を使う場合のセッティングについて解説した。
 (4) 地形図とコンパスを使ったナビゲーションを山口付近用のGPS定規を配布し、これの使い方を学ぶ。
 GPS緯度経度情報から地図上の位置の特定方法、またその逆の地図から緯度経度情報を読み取る方法の実習。1/2.5万地形図から特定の位置の緯度経度を読み取るあるいは緯度経度から地形図上の位置を同定する方法。
 (5) 登山用地形図の印刷方法、カシミール3Dの応用方法
9.まとめ  (1) 近年、登山に於ける「道迷い」に起因する事故が多く発生、本講習がこれらの事故を抑制し、安全登山の一助になれば幸いである。いつでも、
 (2) 読図は登山活動の基本で有り、これらの技術はベテランでなくても容易に学べることであり、日頃の登山では常に読図を心がけて活動して欲しいものである。
 (3) 登山活動には地図が必携であり、同時にコンパスをセットで携行してほしい。インターネットの普及により、国土地理院のホームページから容易にダウンロードし、地形図の作成が可能な環境である。これらを使って、登山にはいつでも地図を携行する習慣を付けて欲しいと希望する。必要に応じて目的登山に最適な地形図の出力ができる力をつけられると良い。
 (4) 今回は机上学習を主体にしたが、来期は現場での読図に多くの時間を振り当てた形で開催企画を予定する。
10.配布資料  以下に配布資料の明細を示す。
 ① 陶ヶ岳周辺地形図 ② GPS定規
 ③ 読図、地形図作成、コンパス利用のための資料(DVD)
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